
マンジャロの功罪と代替案|「体重が減る」の先に、筋肉と生活は残るか

食欲を抑え、体重を減らす薬が話題になるたびに、「もう運動は必要ないのでは」という疑問が生まれます。体重が減ることと、体力がつくことは別だからこそ、フィットネスの側から考えたいことがあります。
マンジャロをめぐる議論は、「楽をして痩せるのはよくない」「薬なら簡単」といった話になりがちです。でも、治療が必要な人を根性論で追い詰めるのも、誰でも使える美容アイテムのように扱うのも適切ではありません。誰に、何のために使う薬なのかから整理しましょう。
マンジャロの有効成分はチルゼパチドで、GIPとGLP-1の受容体に作用する薬です。日本の添付文書上の効能・効果は2型糖尿病。美容目的の減量は、承認された適応とは異なります。出典:PMDA「マンジャロ」添付文書
同じ成分を含むゼップバウンドには肥満症の適応がありますが、誰にでも使えるわけではありません。肥満症については、高血圧・脂質異常症・耐糖能障害のいずれかがあり、食事・運動療法で十分な効果が得られず、BMI35以上、またはBMI27以上かつ肥満に関連する健康障害が2つ以上、といった条件があります。診断と適応の判断は医師が行います。出典:PMDA「ゼップバウンド」添付文書・肥満症の適応条件
成分が同じことと、商品名・承認された用途・治療条件が同じことは、分けて理解する必要があります。厚生労働省も、マンジャロなどを「痩せる薬」として安易に美容・痩身目的で使うことに注意を促しています。出典:厚生労働省の注意喚起
チルゼパチドに体重を減らす効果が報告されていること自体は事実です。SURMOUNT-1試験の体組成サブ研究では、開始時と72週後の測定データがそろった160人を分析し、チルゼパチド群で体重が平均21.3%減少、プラセボ群で5.3%減少しました。
ただし、これは肥満または過体重の人を対象とした研究で、平均BMIは38.0でした。標準体重の人が美容目的で使った場合の安全性や、個人の減量幅を保証する数字ではありません。メーカー関係者が研究に関与している点も含めて読む必要があります。出典:Lookほか、Diabetes, Obesity and Metabolism、2025年
医療として必要な人に薬が役立つ可能性を認めることと、安易な使用を勧めないことは両立します。ここを対立させない姿勢が、体づくりに関わる側にも必要だと考えます。
添付文書には、吐き気、嘔吐、下痢、便秘などの副作用が記載されています。重大な副作用には急性膵炎、胆嚢炎など、低血糖も含まれます。特にインスリンや一部の糖尿病薬との併用には注意が必要です。食べられない、水分が取れない状態や体調不良を「痩せている証拠」として我慢しないでください。持続する激しい腹痛などがあれば、速やかに医療機関へ相談してください。出典:PMDA添付文書「副作用」
先ほどの研究では、減少した体重のおよそ75%が脂肪量、25%が除脂肪量でした。この割合はプラセボ群でもおおむね同じです。除脂肪量は筋肉だけを指す数値ではないため、「減った体重の4分の1は筋肉」と言い換えるのは不正確です。出典:SURMOUNT-1体組成サブ研究
ここから考えたいのは、「何kg減ったか」と一緒に、食事の内容や普段の動きやすさも確認することです。体組成計の1回の数値だけで判定せず、同じ条件での記録や運動時の様子を合わせて見ていきます。
忙しい日の食事をどうするか。運動の時間をどこに置くか。治療を続ける期間や、その後の方針をどう考えるか。体重が下がった後にも、こうした課題は残ります。
「目標体重になったので自己判断でやめる」「効きにくくなった気がするので増やす」といった調整は避け、処方医と相談してください。ジムが服薬の開始・中止・増減を判断することはできません。
生活の見直しだけで十分か、治療が必要かは人によって異なります。運動を薬の同等品として勧めるのではなく、目的に応じて次のように整理すると考えやすくなります。
| 現在の状況 | 取り組む方向 |
|---|---|
| 見た目が気になり、減量を考えている | 本当に減量が必要かを確認。体重だけでなく、食事・筋力・体調も整理する |
| 体重とともに血圧や血糖なども気になる | 医療機関で評価を受け、食事・運動と治療の選択肢を相談する |
| すでに処方を受けている | 処方医に体調や食事量を共有。運動できる状態か確認し、無理のない活動を組み合わせる |
日常での第一歩は、数日分の食事と活動を記録して、変更しやすい点をひとつ見つけること。たとえば、食事を抜いて夜だけ多く食べる日があるなら、その日の昼食を用意できないか考える。座っている時間が長いなら、短く立ち上がる機会をつくる。極端な制限を増やす前に、生活の困りごとを減らします。
運動が可能な人にとって、筋トレも選択肢です。厚生労働省は健康づくりの目安として週2〜3日を示していますが、体力や病気、治療内容に合わせた調整が前提です。出典:厚生労働省「筋力トレーニングについて」
BodyDesignGYMとして大切にしたいのは、「何週間で何kg」という競争よりも、食べることと動くことを続けられる状態です。ジムではフォームや負荷を調整し、生活に入れやすい運動の予定を一緒に考えられます。治療中なら、医師の指示を踏まえた運動の相談が出発点になります。
体重を減らす方法を選ぶとき、減った先の自分がどんな毎日を送りたいかも考えてみてください。その答えが、薬だけでも、筋トレだけでも終わらない計画につながります。
執筆:BDGインサイダー編集部。一般向けの情報で、医師による診断や処方の代わりにはなりません。薬の選択・使用・変更は医師にご相談ください。
情報確認日:2026年9月22日(日本時間)。画像はAdobe Stockのライセンス取得済みイメージ写真です。当ジムの設備・利用者、番組の場面を示す写真ではありません。